中学受験の算数で失速する理由

中学受験の算数では、成績が良かったのに急激に悪くなるケースがあるといわれています。どのようなときに失速するのでしょうか。


中学受験の算数における「失速」とは?

「成績が良かったのに、急激に悪くなる」

このことを「失速」というようです。
中学受験では、低年齢から勉強させると、「高学年で失速する」「小5の夏で失速する」「小6で失速する」などと言われていますが、本当でしょうか。
ここではあり得るとすれば(※)、何が原因だと考えられるのかを紹介します。

※「低年齢から勉強させると高学年で失速する。低学年ではのびのびと遊ばせよう! 後のびしますよ」はマーケティングの結果、このように言えば集客できると考えているためだと思います。嘘です。
が、さまざまなブログを読んでいると失速はあるようです。
そこで、ここではなぜ失速するのかを考察してみました。


学習内容が難しくなって、失速する可能性

中学受験における「失速」があるとすれば、まず考えられるのは学習内容が難しくなって、ついていけなくなる可能性です。
ここでは、どこでつまづく可能性があるのか紹介します。

小4からジワジワ偏差値が落ちていくケース

小4からジワジワ偏差値が落ちていくケースがあるとすれば、以下ではないか、と思います。

・ある大手塾では、低学年においては中学受験の算数とはあまり関係がない学習をする(カリキュラムが先取り学習になっている大手塾もあります)
・低学年の学習内容はかんたんで、ライバルもほとんど勉強していない。そういうなか、猛勉強(詳しくは後述)
・低学年の模試では高偏差値
・しかし、中学受験の算数が本格化するとついていけなくなって成績が落ちる

塾だけではありません。
市販の問題集にも、受験とはあまり関係がないものもあります。
そういうものに時間を費やすと低学年の模試は高偏差値になりますが、中学受験のカリキュラムがはじまればつまづくこともあると思います。
中学受験を考えているかたは気をつけたいものですね。

5年前半の「割合」が理解できないケース

5年前半では「売買損益」「食塩水」がでてきます。
売買損益は、つぎの2点で苦手とする子どもがいます。

・子どもには馴染みのない言葉、たとえば「売上」「利益」などがでてくる
・割合の計算もある

食塩水は、つぎの2点で苦手とする子どもがいます。

・「食塩が水に溶ける」という現象がわからない子どももいる(5%の食塩水の一部をとれば、それが5%だと理解できない)。
・濃度の計算もある

あとは「速さ」でもつまづく可能性があります。
ただ、ここに関しては、つぎの2つの先取り学習をすることでつまづく確率をおさえることもできます。

・最レベなどにある「速さ」のかんたんな問題を解かせておく(参照:低年齢からはじめる中学受験対策。家庭学習で使われている算数の問題集
・教科書ドリル(小6)の「速さ」の問題を解かせておく(特に「速さの単位」)

ほかにも、ダイヤグラムを学習する前に、教科書ドリル(小6)の「比例と反比例」を解かせておくといいかもしれません。

5年後半の「比」が理解できないケース

5年後半では「比」がでてきます。
特に「速さと比」は難解で、つまづく子どもがいます。

ここに関しては教科書ドリル(小5)の「比」の計算を先取り学習しておくといいと思います。それだけでは全然足りませんが、かんたんなものを先に済ませておくことで、難しいことに時間を割くことができます。

5年後半から偏差値が落ちるケース

小6が近づくと、算数の模試の難易度がグッと上がります。
ここで壁にぶち当たって偏差値が落ちる可能性があります。

・小5の後半まで:ひねりもない基本さえ、きっちり解ければ偏差値65くらいまでいける(もちろん塾によります)
・小5の後半以降:基本しかできていないと難易度があがってくる小5の後半以降ついていけなくなって、偏差値がジワジワ下落していく

難易度だけではありません。
5年後半になると入試問題が視野に入ってくるので、総合問題の対策ができていないと偏差値がジワジワと落ちていく可能性があります。

ちなみに、ネットでは、サピックスの通塾生のなかに「マンスリー番長」がいると言われています。
マンスリー番長とは、範囲が決まっているマンスリーテストでは偏差値が高いものの、出題範囲が決まっていないテストだと偏差値が低くなる子どものことです。
この真偽はわかりませんが、もしマンスリー番長なる子どもがいるのならば総合問題の対策ができていないのでしょうね。

6年の夏に失速するケース

塾によりますが、6年のはじめから6年の夏までは土台固めとして5年の内容とさほど変わらないことを学習することもあるようです。

夏以降は入試問題です。
応用問題なので、ここで解けなくなって偏差値が落ちるケースもあるかもしれません。

ライバルとの差がではじめて失速するケース

受験は相対評価です。
いくら勉強していても、ライバルが同等以上勉強していれば偏差値が落ちることもあります。
ここではライバルとの差がではじめて失速するケースを考えます。

小4から偏差値が落ちていくケース

多くの家庭では、小3まではほとんど勉強していません。
その時期に子どもに受験期並みに勉強させれば、全国上位も難しくはありません。

しかし、小4からはちがいます。
多くの家庭が小4から勉強をはじめます。小5、小6と学年が上がるにつれて勉強量も増やしていきます。
また(前述したように)小4からは当然中学受験と関係がある内容を学習しますし、小5からは難易度があがります。

つまり、たとえ低学年で高偏差値であっても、小4からライバルに追いついかれ、小5以降で抜かれることもあると考えられます。

参考までに、ある大手塾の授業時間です。
※この塾では、小3までは学習習慣をつけるという位置づけで、中学受験の学習は小4からはじまります。

・小4:380時間
・小5:530時間
・小6:1000時間

小5の後半から猛勉強をはじめる、つまり小3までは勉強時間が少ないのはよくわかるのではないでしょうか。

※前述した通り、小3までは学習内容もかんたんで、中学受験の算数とは関係のないことを学習する大手塾もあります。つまり、実は学習内容からもライバルと差がついていなかったわけですね。

小6から偏差値が落ちていくケース

塾のカリキュラム通りに学習していたら、小6。
「そろそろ受験だ。本気で学習しよう!」と思ってもライバルも同じ、いや、それ以上勉強している可能性があります。
そのようななか、いくら勉強したところで偏差値はあまり変わらないのはよくわかると思います。

子どもの心による失速

失速の原因は、子どもの心もあると思います。
ここでは、子どもの心に変調をきたし、失速するケースを考えてみます。

子どもの心の成長とともに失速するケース

早期教育、低学年の学習では、子どもはまだ自分の意志がないに等しく親の言う通りにします。
それが小3、小4と成長するにつれて自我も芽生えてきて、そのうち勉強したくないということもでてくると思います。
「自分の意志を持つ=成長した証拠」なので喜ばしいことですが、勉強を拒否して成績が悪くなることも考えられます(逆に子どもが勉強したいと思うようになって成績があがることもあると思います)。

勉強のストレスによる失速

中学受験で難関中を目指す場合、勉強量は膨大です。
子どもには酷です。
無理をさせているとそのうち心に変調をきたし、失速することもあるかと思います。

高校受験でも失速があるらしい

高校受験の塾のブログに、つぎのような話がありました。

・中3の夏あたりまで偏差値70超
・夏以降、数学の偏差値が下落。それをキッカケに全科目の偏差値が下降。偏差値50台にまで落ちるケースもある
・この塾がある地域では、3、4割の子どもが失速している可能性がある

失速の原因は「症状」から鑑みて、総合問題が解けないことだと思います。
基本的には塾の指導法に問題があるわけですが、家庭や環境が悪い可能性もあります。

失速の原因が塾の指導法にある場合

失速が塾の指導法にある場合、つぎのことが原因だと思います。

1.総合問題の対策をしていない
2.公式や解法パターンを丸暗記させている。その結果、子どもは考えなくなっている

上記1。
単純に塾が総合問題の対策をしていない場合です。
これが原因ならば家庭で総合問題の対策をしたほうがいいかもしれません。

上記2。
定期テストのような出題範囲が決まっているテストだと、公式や解法パターンの丸暗記でも乗りきることができます。
しかし、実力テストのような出題範囲が決まっていないテストを公式や解法パターンの丸暗記で乗り切ろうとすれば「大量の演習」が必要です。
塾ではそれをしていないのかもしれませんね。
ちなみに、「考える力」をつけていれば、そんなに大量の問題を解かせなくてもよいと思いますが(※)、これも塾ではやらなかったのでしょうね。
※公式や解法パターンの丸暗記をすると大量の演習が必要。角度を変えてみると「なぜか考える力」を身に着けさせると、そこまでの大量演習は必要なくなります。

失速の原因が家庭にある場合

「家庭や環境」だとすれば、つぎのことが原因だと思います。

1.勉強量が少ない
2.勉強以外のこと

上記1。
受験が近くなればなるほど勉強量が増えるのが常です。
前述の地区の子どもは勉強量を増やすことができなかったのかもしれません。

上記2。
家族の不和など、勉強以外のことで崩れる場合です。

中学受験を攻略のトップページ