中学受験、低学年での入塾・通塾・勉強は意味があるのか?

中学受験、低学年での入塾・通塾・勉強は意味があるのでしょうか。


「低学年からの勉強は意味があるのか?」の議論のときに一部の塾の話を持ち出すな!

元サピックスの塾講師による記事に、つぎのようにありました。

小1で一番上のクラスにいた子が、小6の最後までずっと一番上にい続けるというのは、稀なケースですね。間延びもありますし、小4になると、公文や他塾で勉強してきた優秀な子も入ってくる。そこで彼らに抜かれてしまって、クラス落ちをして、モチベーションもなくなって……というケースはよく見られます
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89256

この記事の信ぴょう性は定かではありませんが、「正しい」と仮定します。

さて、このような記事をもってして、「ほら! 小1から入塾してガリガリ勉強させても失速しているじゃん! 低学年から勉強させても意味がない!!!」と言い出すひとたちがいますが、間違っていますよね。
なぜ、そう言えるのか。

(〇)「猫」は「空を飛べない」
(×)だから、「動物」は「空を飛べない」

これは間違っていますよね。
鳥は飛べますから。

これと同じです。

(〇)「サピックスにおいては小1から通塾」(猫)しても失速するので「意味がない」(空を飛べない)
(×)だから、「低学年からの勉強」(動物)は「意味がない」(空を飛べない)




(元サピックス講師の記事が正しいとすれば)サピックスの低学年の教材でガリガリ勉強させても意味はないのかもしれません。
が、それをもってして、「低学年の勉強は意味がない」というのは誤りです。

さて、つぎのように考えるひともいると思います。

「元サピックス講師の記事から、低学年の勉強まで否定できないことはわかった。でも、低学年の通塾は意味がないと言えるのではないか」

しかし、この記事からだけだと低学年の通塾も否定することはできません。
なぜなら、学習内容が異なるためです。
どういうことか。

塾によって学習内容が異なります(学習内容はあくまで一例)。

(塾A) 受験に関することをバリバリ勉強
(塾B) パズル・思考力の問題をバリバリ勉強

塾Bだと、「小1〜3のトップ層は、失速する」となっても、それは塾Aに当てはまるわけではありません。学習内容が違うわけですから。
ましてや、「低学年で塾に通わせても意味がない!」なんて言えるはずもありません(塾Bがその集団を代表するものであれば、ですが、そんなわけはないですよね)。



一部の塾の話をもってして、低学年からの通塾に意味があるのかないのかを語るのは愚かなひとがすることです。

「低学年からの勉強は意味があるのか?」の議論のときに個人の体験談を持ち出すな!

低学年から通塾して東大の理三に合格したかたもいます。

2年生の頃に浜学園に入学しました。
当時飛び級しており3年生の授業を受けておりました。
※現役の東大生(医学部4年、理科3類)に「中学受験」について聞いてみたときの話です。

ほかにも、佐藤ママの末っ子が小2で1年飛び級という形で浜学園に入塾させたそうです。

先ほどと同じです。これをもってして、「低学年からの通塾は効果がある!」というのも間違っています。
「ここは雨。だから世界は雨」というのと同じです。
個人の体験談を持ってして、全体を語るのは愚の骨頂です。

低学年の通塾の効果はケースバイケース!

つぎのような話、正しいと思いますか。

Aくんは低学年で通塾していたけど、御三家には届かなかった。一方、Bくんは小4から通塾して御三家に合格した。低学年から通塾させても効果がないのではない!

間違っていますよね。
低学年からの通塾の効果を考えるとき、能力、環境などがまるでちがう2人を比較するのは愚の骨頂です。

正しくは以下のように比較しないといけません。

・低学年で通塾していたAくん。低学年で通塾しなかったAくん

もしくは、統計をとる必要があります。

いずれも、現代の科学技術では不可能です。
つまり、低学年の通塾の効果は誰にもわかりません。

結局のところ、以下ではないでしょうか。

低学年から通塾させて高学歴になる子どももいれば、そうではない子どももいる。
失速する子どももいれば、しない子どももいる。
ケースバイケース。

同じ低学年から通塾でも、家庭によってずいぶんやりかたが異なるでしょうしね。

「そもそも狭き門」を理解していないひとたちの勘違い

男子御三家の定員は約1000人。
女子御三家の定員は約580人。

母数を何にするのか、もありますが、首都圏の受験生5万人にすれば御三家に合格するのは受験生の3.2%になります。

さて、「低学年から入塾」に効果がないとします。
すると、低学年から入塾させても御三家に合格する確率は3.2%となります。

一方、仮に低学年からの入塾に効果があって、この確率を10%に引き上げたとしましょう。
1000人のうち、御三家に届くのは32人のところが100人になるので、かなりの効果があるといえますよね。

ただ、この数字が微妙。

(効果なし)1000人のうち、968人は失速(32人は合格)
(効果あり)1000人のうち、900人は失速(100人は合格)

低学年からの入塾に効果があってもなくても、低学年から通塾している子どもの大半が「御三家には届かなかった」となります(1000人のうち、968人でも900人でも大差がないように感じますよね)。これをもってして、「低学年から入塾させても意味がない」と主張している塾講師もいるようです。

つまり、低学年から通塾している子どもたち100人のうち95人が御三家に届かなくても、「低学年から通塾は効果あり」の可能性があるわけですが(効果がない場合は97人が届かない)、これをわかっていない塾講師が低学年から通塾している子どもたちの大多数が御三家に届かなかったことをもってして、「低学年からの通塾は意味がない」と言っていることもあるようです。

ただ、そもそも御三家に届く子どもの数が少ないため、それが低学年から通塾の効果かどうかはわからないと思います。
そういうときに役立つのは統計ですが、成績を左右する要素は多岐に渡ります。統計はとれない、つまり、低学年の通塾による効果は誰にもわからないと思います。

ちなみに――。

「低学年から入塾させて高偏差値でも高学歴にならない!」みたいなアホなことを言うひとたちもいるようです。

高学歴は全体の2.2%(※)。
※旧帝大+3(難関国公立大)の割合。高学歴の割合は何%!? 同世代の人口から分析!(https://takumick.com/kougakureki-rate#3)から引用

「低学年から入塾させても」に効果がないとすれば、低学年から入塾させても高学歴になる確率は2.2%。

…と先ほどと同じロジックで、「低学年からの通塾に効果があるかどうかはわからない」となりますよね。

真偽は定かではない噂話

以前、つぎのようなメッセージを複数人からいただいたことがあります。

「成績上位者の名前はわかる。それを見ていたら、低学年のトップ層はずっとトップ層だった」

これはおそらく、ですが、関西の話ではないでしょうか。
なぜそう言えるのか。

関東の大手塾では、「低学年のときはパズル・思考力の問題」のように受験とは関係がない勉強をするようです。つまり、低学年と高学年の勉強はまったくちがうため、低学年でトップ層でも高学年になると失速することもあるようです。

一方、関西の大手塾では、低学年のときから受験算数を学習します。
低学年で成績が良ければ、そのまま高学年になると失速するとは考えにくいです。

というわけで、関東と関西では事情がちがうのかもしれないな、と思っています。 つまり、「関東では小1から塾の教材をガリガリやっても意味がない」「関西では意味はある」なのかもしれないな、と考えています。

ただ、低年齢から勉強させても中途半端な学力――たとえば、「小3で小6までの基本は習得」だと追い抜かれる可能性は十分にあると思っています。うちはそうならないように、常に入試問題を意識して(←ガチで入試問題を解かせている理由の1つ)、入試問題を解けるようになるまで手を抜きません。

塾側の視点。低学年のカリキュラムをつくるのは難しい!

塾側に視点を変えます。

塾の低学年のカリキュラムって、難しいですね。

「塾に子どもを預けさえすれば優等生になる!」と思っている親が多くて、「低学年、授業にならないんじゃないの?」「そんな状況で、難易度をあげていけるわけもないので、楽しく解けるパズル・思考力の問題は役立つのだろうな」と思います。

選抜クラスを作って受験カリキュラムにすれば、けた違いの学力の子どもを量産できるでしょうけど、けた違いの学力になると塾を辞めて実績にならない、儲けにもならない、になると思いますし(低学年でけた外れの学力にするよ、といっても大金を支払う親はいないんじゃないですかね。一方、高学年では偏差値5あげるために大金を積むひとはたくさんいそう)。
それに世間の目は厳しいですからね。
ま、関西では算数はガンガンにやっているようですが。

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